dely堀江さんのnoteを読んで

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 私は以前から、クラシルを運営するdely株式会社の堀江裕介さんに注目していた。何故かと言えば、クラシルが今のような凄いサービスになると予見したからでは決してなく、むしろその逆である。

 

 実は彼とは大昔に1度だけ会ったことがある。スタートアップがプレゼンをする集会に誘われて顔を出した際、当時は祖業のフードデリバリー事業を手がけようとしていたdelyがたまたま発表を行っていた。低頻度とは言え、私がまだそうした場に関心を持って出かけていっていた頃だから、2014年前後のことだと思う。

 

 私の第一印象は、よくこんな事業を選んだなと言うものだった。コロナの影響もあり、今でこそフードデリバリーは社会に浸透しつつある。しかし当時としてはやはりまだ早いという感覚で、恐らく仕上がりの利益率も低く、かつ軌道に乗るまでの先行投資も多額に上ることから、本業とのシナジーのないスタートアップが単体で取り組む領域としてはあまりにも厳しいのではないかとの感想は拭えなかった。

 

 ただ、今と変わらない眼光の鋭さを備えた堀江さんは独特の自身をみなぎらせていて、事業そのものに対する評価とのギャップが返って私に強い印象を与えた。それでその後もしばらく彼のことはどうしてか記憶に残っていたのである。他の参加者がどのようなプレゼンをしていたのかは今となってはほとんど覚えていない(アルパカの横川さんと知り合ったのもそこだったような気もするが、別の回だったような気もする)。

 

 やはりと言うか、最初の事業はしばらくして立ち行かなくなったようだった。だが驚くべきはそこからだった。資本の再構成はあったらしいものの、会社を変えずに彼は事業を模索し続け、社員離散の憂き目を乗り越えて今日に至るまでの大逆転のストーリーを描いてみせた。その過程では、ヤフーへの株式譲渡で投資家にも多大なリターンをもたらしている。

 

 果たして、未だ30歳にもならない若者がどうしてそんな大事を成し遂げられたのか。最初の姿を見ていただけに、クラシルが凄いらしいという噂を聞くにつれ、彼に対する興味は募っていった。と同時に、人の、特に若い人の変化に対して自分はもっと可能性を感じるべきではないかという考え方を持つようになり始めた。

 

 その答えの一端を、今回のnoteで垣間見れたような気がした。

 

他にもCMの資金が必要で売上0の会社が2ヶ月で10億、年間で35億近くの広告宣伝費を使った年。社長の私は資金調達という大将戦をしていました。まだ24歳だった私は人脈も全くありません。一方で競合は業界の大先輩ばかり。どう考えても勝てるはずない戦いですが結果的にはこの戦いにも勝ちました。僕は途轍もない執念を持って戦っていました。とにかく会う人会う人にインパクトを残し続け、あの男は凄いと投資家の方々から信頼してもらうためにあらゆることをやり続けました。競合企業の社長の考えていることをチェックするためにTweetのfavを毎日チェックし、誰と絡んでいるか、FBで誰と今日繋がったなども逐一チェックし、それが著名VCであれば一目散にアポを取り、delyが絶対に勝つ理由を説明しその資金調達や提携を全てdelyに引き寄せました。

 

 本人も言うように、この執念の強さはただごとではない。しかもその方向性が、会社の代表として今何をすべきかというベクトルが、正しくゴールに向けられていながらも、その姿を想像すると少し笑みがこぼれてしまうような、しかし常人にはなかなか思いつきそうもない奇抜な発想と細かな作業によって実行されていることに思わず感心してしまったのだ。

 

 この執着心が、ここまでの過酷な体験から生まれたものなのかどうかはわからない。あるいは、最初の躓きがなくずっと順境にあったなら、今の堀江さんは存在したのかどうか。それは本人にしかわからないこととは思うが、同じように勝負に勝ちたいと望みながらも、ここまで物事を詰めきれた人のことを自分も含めてそう知らないだけに、この一つのエピソードを知っただけでも様々に考えさせられることとなった。

 

 また、これは完全に個人的な価値観のことに過ぎないが、最近の組織論や度々されているゴミ拾いの話など、堀江さんの日頃のツイートなどを見ていても、同じ常識破りにしてもそれらが基本的には内側に向いているというか、よくある他者を押しのけてまでの過度な自己利益の追求に寄っていないような印象があり、そこも共感できるポイントとして非常に大きい。

 

 外部から見れば彼やクラシルは一定の成功を収めているように思えるが、恐らくdely自身としてはまだ途上も途上ということなのだろう。経営者としてまだまだ進化していくに違いない堀江さんの率いる組織が、数年後数十年後にどのような変化を遂げ世の中にどんなインパクトを与えることになるのか、全くの部外者ではあるが行く末を見るのを勝手ながらに楽しみにしている。